AAENの協力校であるタイ・キングモンクット工科大学トンブリー校(KMUTT)建築・デザイン学部メディアアーツBFAプログラム主催のワークショップが実施された。
このBFAプログラムは、アニメーション、グラフィックデザイン、映画の3コースから成り、4年間のカリキュラムを修了すると美術学士BFAが授与される。
本ワークショップの目的は、タイの文化に触れて得たインスピレーションをもとに、日中韓タイの学生がチームを組んで1分から1分半程度のアニメーションを企画し、アニマティクスまでを共同制作することである。
2025年6月23日(月)~27日(金)
藝大からは1名の学生が参加した。また1名の教員が参加し、ワークショップの視察とセミナーでの発表を行った。
参加した学生は、日本・中国・韓国・タイの4か国混成の6グループに分けられ、タイの文化に根ざした1分〜1分半程度のアニメーションを企画し、アニマティクスレベルのショートアニメーションを制作した。アニマティクスとは、映像制作におけるプリプロダクション(事前制作)段階で、絵コンテに動きや音声を加えて、より完成形に近いイメージを掴むための動画のことを指す。ワークショップ1日目には、各国のゲストによる挨拶を含むオープニングセレモニー、オリエンテーション、参加者による自己紹介やアイスブレイクなどが行われた。
ワークショップ2日目には、タイ国内の重要な寺院や歴史を学ぶことのできる博物館へ行く文化ツアーが行われた。ワット・サケート(仏教寺院)、ニッタラッタナコーシン(博物館)、ロハ・プラサート(寺院)へのツアーの中、参加者にはスケッチや写真撮影、録音などを行なって、アニメーションを企画するためのピースとなるものを収集することが求められた。参加者たちは積極的にスケッチなどを行っていた。こうしたワークショップデザインも最終成果物に活かされ、有効に機能していた。
ワークショップ3日目には、ウォルト・ディズニー・スタジオやブルー・スカイ・スタジオで『アトランティス』『ターザン』『アイス・エイジ』のアニメーターを務めるなど、米国で数々の話題作に携わり、タイのアニメーション産業に多大な影響を与えたKompin Kemgumnird氏による、アニメーションの作り方やストーリーテリングに関する講座が開かれた。短い制作時間だからこそ、きちんとストーリーラインを組み立てることの重要性と、一目ではっきりと他者に伝わるキャラクターデザインの重要性が説かれ、基本的なアニメーションの制作フローが伝えられた。
ワークショップ4日目に行われたセミナーでは、5大学の教員がそれぞれの国や大学で実行されている特徴的な教育内容や関連事業を発表した。
[1] タイのメコン川文明の信仰の研究に基づくアニメーションデザイン(KMUTT)
[2] 人工知能の中国アニメーション分野における革新的な応用(CUC)
[3] 中国アニメーションの過去、現在、未来(CUC)
[4] 「2024年済州島日韓共同ワークショップ」に関する考察と今後の展望(TUA)
[5] ChatGPTでストーリーを作成する(K’ARTS)
[6] ハイブリッド学習を生き残る(KMUTT)
等の発表があった。東京藝大の教員は、2024年8月に韓国の済州島で行った日韓学生共同アニメーション制作ワークショップの紹介と、そこで得た知見の共有を行った。
参加学生は皆芸術系ということもあり、それぞれの得意分野を生かし、実際の制作時間は1日半程度だったにも関わらず完成度の高いものが出来上がった。映像分野でも活用の幅が拡がっているAI技術も利用され、未完成で良いとされていたにも関わらずほぼ完成作品のようなクオリティのものも出来上がっていた。ワークショップ最終日の最終上映会及び講評会では、各国のゲストからその成果を褒め称える言葉が述べられた。
日中韓の学校が発起人となり、中心となって進めてきたAAEN事業であったが、KMUTTの教員チームによれば、本ワークショップを毎年開催し、活動の輪を拡げる予定である。